腱鞘炎と関節症は、手首や指、ひじ、膝などの関節やその周囲の組織に生じる慢性的な痛みや機能障害を伴う症状群ですが、それぞれ発生する部位や原因、症状の特徴に違いがあります。ここではまず、腱鞘炎と関節症の違いを明確にし、その後、原因や症状、診断、治療法、予防策について詳しく解説します。

腱鞘炎と関節症の違い

• 発生部位の違い 腱鞘炎は「腱鞘」と呼ばれる腱を包むトンネル状の組織が炎症を起こす病気です。主に腱が動く際に摩擦や圧迫が生じる部分で炎症が起こります。対して関節症は「関節」の軟骨や骨の変形、摩耗に伴う疾患で、関節自体に痛みや機能障害が生じます。
• 原因の違い 腱鞘炎は手指や手首の繰り返しの動作や過度な負荷が直接的な原因となることが多く、特に手作業やパソコン作業の多い人に多いです。関節症は加齢による軟骨の劣化や外傷、遺伝的要素が主な原因で、変形性関節症は中高年に多く見られます。
• 症状の違い 腱鞘炎は腱鞘部分の痛み、腫れ、熱感、動かすときの引っかかりや違和感が特徴です。動作時の痛みが顕著で、腱が通るトンネルで「カクン」となる感覚（ばね指）が出ることもあります。関節症は関節のこわばり、慢性的な痛み、関節の変形、可動域制限が主で、動かさない時でも痛むことがあります。

腱鞘炎とは

腱鞘炎は、腱が通る腱鞘の部分が炎症を起こし、痛みや腫れ、動作制限を引き起こす状態です。代表的なものにドケルバン病（親指の腱鞘炎）やばね指があります。長時間の手作業や繰り返しの動作が原因となることが多いです。

関節症とは

関節症は関節の軟骨がすり減り、炎症や変形を伴う疾患群を指します。特に変形性関節症は加齢に伴う軟骨の摩耗によるもので、膝や股関節、手の関節に多く見られます。関節の痛みやこわばり、可動域の制限が特徴です。

発症の主な原因とリスク要因

• 繰り返しの動作：同じ動作を長時間繰り返すことで腱や関節に負担がかかる
• 加齢：軟骨の弾力性低下や血流減少が症状を進行させる
• 外傷や負荷の蓄積：ケガや過剰な運動がトリガーになる場合もある
• 遺伝的要素やホルモンバランスの変化：特に女性に多く見られる傾向がある

症状の特徴

腱鞘炎は痛み、腫れ、指や手首の動かしにくさが主症状です。特に動作時に痛みが増すことが多いです。関節症は関節の痛みやこわばり、関節の変形や動かしづらさが目立ちます。重症化すると日常生活の動作に支障をきたします。

早期発見の重要性

症状が軽いうちに適切なケアを行うことで、悪化を防ぎ、症状の改善が期待できます。痛みや違和感を感じたら無理せず、手や関節の使い過ぎを避けることが大切です。

日常生活でできるケア方法

• 休息の確保：症状がある場合は使い過ぎを避け、十分な休息をとる
• ストレッチや軽い運動：関節や腱の柔軟性を保つための体操を取り入れる
• 冷却・温熱療法：炎症期は冷やし、その後は血行促進のため温める
• 姿勢や作業環境の改善：適切な姿勢や作業道具の使用で負担軽減
• サポーターや装具の利用：痛みの軽減や動作制限のために使用する

専門的な診断と治療法

症状が長引く場合や日常生活に支障が出る場合は整形外科やリウマチ科の受診を推奨します。診断は問診、身体検査、必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像診断を行います。

治療は症状や重症度により異なりますが、一般的には以下が用いられます。

• 薬物療法：痛みや炎症を抑える薬や注射
• 理学療法：リハビリや運動療法で機能改善を目指す
• 装具療法：固定や支持により負担を軽減
• 手術療法：保存療法で効果が不十分な場合に検討される

予防のポイント

• 適切な休憩を取り、長時間の同じ動作を避ける
• 手首や指のストレッチを日常的に行う
• 作業環境や姿勢を見直し、負担を分散させる
• 体重管理やバランスの良い食事で関節の健康を保つ

生活の質を守るために

痛みや動作制限があると、仕事や趣味、家事に支障が出ることもあります。適切な対処と予防を心がけ、症状が改善しない場合は早めに専門医に相談することで、快適な生活を維持しましょう。