睡眠時無呼吸症候群が心臓・脳に与える影響とは
睡眠中に呼吸が繰り返し止まる睡眠時無呼吸症候群は、いびきや日中の強い眠気だけでなく、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの重大な疾患リスクを高めることが知られています。本記事では、睡眠時無呼吸症候群の原因や代表的な症状、身体への影響を詳しく解説するとともに、検査方法やCPAP療法・マウスピース治療などの具体的な治療選択肢まで専門的に紹介しています。早期発見・早期治療の重要性を理解するための参考情報としてご活用ください。
睡眠時無呼吸症候群の基本的な概要
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が一時的に停止、または著しく浅くなる状態を繰り返す睡眠障害の総称です。英語では Sleep Apnea Syndrome(SAS) と呼ばれています。医学的には、睡眠中に10秒以上の無呼吸や低呼吸が1時間あたり5回以上認められ、日中の眠気や生活への支障がある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されることが一般的です。重症例では、1時間に30回以上無呼吸が起こることもあります。
日本においても潜在的な患者数は数百万人規模と推定されており、特に働き盛りの世代で見逃されやすい疾患の一つです。「単なるいびき」や「疲れが取れないだけ」と軽視されやすい一方で、全身の健康に深刻な影響を及ぼすことが明らかになっています。
睡眠時無呼吸症候群の主な分類
睡眠時無呼吸症候群は、発症の原因やメカニズムによって大きく3つのタイプに分類されます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
最も多いタイプで、全体の約9割を占めます。睡眠中に舌や喉周囲の筋肉が弛緩し、気道が物理的に塞がれることで呼吸が妨げられます。
特徴としては、
- 大きないびき
- 呼吸が止まった後のあえぐような呼吸
- 肥満や首周りの太さ
などが挙げられます。特に日本人は顎が小さい骨格の人が多く、肥満でなくても発症するケースが少なくありません。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
脳の呼吸中枢からの指令がうまく働かず、一時的に呼吸が止まるタイプです。心不全や脳血管障害、神経疾患などが背景にあることが多く、いびきが目立たない場合もあります。
混合型睡眠時無呼吸症候群
閉塞性と中枢性の両方の特徴を併せ持つタイプで、治療には専門的な評価が必要です。
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状
夜間にみられる症状
睡眠中の症状は本人が自覚しにくく、家族や同居人から指摘されて気づくことが多い傾向にあります。
- 大きないびきが続く
- 呼吸が止まる、息苦しそうに見える
- 寝汗を大量にかく
- 夜中に何度も目が覚める
- 夜間頻尿
これらは、睡眠の質が著しく低下しているサインと考えられます。
日中に現れる症状
- 強い眠気や居眠り
- 集中力や判断力の低下
- 起床時の頭痛
- 慢性的な疲労感
- 気分の落ち込みや意欲低下
特に日中の眠気は、交通事故や作業中のミスにつながる可能性があり、社会的な影響も大きい問題です。
睡眠時無呼吸症候群が身体に及ぼす影響
心臓・血管系への悪影響
無呼吸が繰り返されると、血中の酸素濃度が低下し、交感神経が過剰に刺激されます。その結果、血圧が上昇し、高血圧が慢性化しやすくなります。
長期的には、
- 心筋梗塞
- 不整脈
- 心不全
などのリスクが高まることが知られています。
脳血管障害との関連
睡眠時無呼吸症候群は、脳卒中や一過性脳虚血発作との関連も指摘されています。夜間の低酸素状態が脳血流に悪影響を与えることが主な要因と考えられています。
生活習慣病との関係
インスリン抵抗性が高まり、2型糖尿病の発症や悪化につながる可能性があります。また、脂質異常症やメタボリックシンドロームとも密接に関連しています。
精神面・QOLへの影響
慢性的な睡眠障害は、抑うつ状態、不安感、集中力低下を引き起こし、仕事や日常生活の質(QOL)を大きく低下させます。
睡眠時無呼吸症候群の原因とリスク要因
身体的要因
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 顎が小さい、下顎後退
- 首周囲径が太い
- 扁桃肥大や鼻腔の構造異常
生活習慣要因
- 就寝前の飲酒
- 喫煙
- 睡眠薬や鎮静薬の使用
- 不規則な生活リズム
年齢・性別の影響
男性に多く見られますが、女性でも閉経後はホルモンバランスの変化により発症リスクが上昇します。加齢とともに有病率は高くなる傾向があります。
睡眠時無呼吸症候群の検査と診断
簡易検査(自宅検査)
自宅で行える検査で、呼吸の状態、酸素飽和度、脈拍などを測定します。スクリーニング目的として広く利用されています。
精密検査(PSG検査)
医療機関に入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査が、診断の標準とされています。無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出し、重症度を評価します。
睡眠時無呼吸症候群の主な治療法
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して広く用いられる治療法です。睡眠中にマスクを装着し、気道に空気を送り込むことで無呼吸を防ぎます。
継続使用により、
- 日中の眠気の改善
- 血圧の安定
- 心血管リスクの低減
が期待されます。
口腔内装置(マウスピース治療)
軽症から中等症の場合、歯科で作製するマウスピースが選択されることがあります。下顎を前方に固定し、気道を確保する仕組みです。
外科的治療
扁桃摘出や顎・鼻の手術など、解剖学的な原因が明確な場合に検討されます。適応は慎重な判断が必要です。
生活習慣の改善
- 減量
- 禁酒・節酒
- 禁煙
- 横向きで寝る
- 規則正しい睡眠習慣
これらは治療効果を高める重要な要素です。
早期発見・早期治療の重要性
睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状が乏しい一方で、放置することで全身に深刻な影響を及ぼします。しかし、適切な検査と治療を行うことで、症状の改善だけでなく、将来的な健康リスクを軽減することが可能とされています。
いびきや日中の眠気を軽視せず、気になる症状があれば早めに専門医に相談することが重要です。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質だけでなく、心臓・脳・代謝・精神面など全身に影響を及ぼす疾患です。正しい知識を持ち、早期に対応することが、健康な生活を維持するための大きな鍵となります。
十分に眠っているはずなのに疲れが取れない、いびきを指摘されるといったサインがある場合は、一度専門的な検査を検討してみる価値があります。