ピロリ菌除菌治療の流れと注意点|再感染を防ぐためにできること

🕒 2025-12-05

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息する細菌であり、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の発症に関わるとされている。長期間にわたり感染が続く場合、胃がん発症リスクの上昇が報告されているため、早期の検査と除菌治療が推奨される。検査方法には、呼気検査、血液検査、便中抗原検査、胃カメラによる組織検査などがあり、症状や状況に応じて選択される。除菌治療は、抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を組み合わせて約1週間行うことが一般的である。生活習慣の改善と継続的なフォローアップが健康維持に役立つ。

はじめに:ピロリ菌と胃の健康の関係性

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に定着して炎症を引き起こす細菌として知られており、慢性的な胃炎や胃潰瘍を中心に、胃の健康に大きな影響を与えることが多い。多くの人が感染していても無症状のまま生活しているが、長期的な炎症が続くことで胃の粘膜が徐々にダメージを受け、機能低下や消化不良につながる場合がある。初期段階では自覚症状が分かりにくく、腹部の不快感や胸やけが続いても、単なる体調不良として見過ごされやすい点が特徴である。こうした背景から、ピロリ菌を早期に把握し、必要な検査や治療について理解することは、胃の健康維持に役立つ。

ピロリ菌がもたらす体内への影響と炎症の仕組み

ピロリ菌は胃の粘膜に接触し、アンモニアなどの物質を作り出すことで生存しやすい環境を整える。その過程で胃粘膜に炎症が起こり、慢性的な胃炎に発展しやすいとされる。炎症が軽度の場合、自覚症状がないまま長期間経過することも多いが、やがて胃の働きが低下すると、膨満感や食欲不振、胃もたれなどが現れることがある。さらに炎症が強くなると胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなる。こうした疾患は痛みを伴うことが多く、生活の質に影響が出る場合がある。

また、近年の研究ではピロリ菌が引き起こす慢性的な炎症が、胃がんリスクと関連していることも指摘されている。もちろん、ピロリ菌に感染したすべての人が胃がんを発症するわけではないが、関連性が確認されている以上、感染の有無を知っておくことは健康管理において重要だといえる。

ピロリ菌の感染経路と生活環境との関係

ピロリ菌感染は幼少期の家庭内感染が多いとされ、口から口への接触や、衛生環境が整っていない状況での飲食などが要因として挙げられる。家族内に感染者がいる場合、子どもが感染する可能性が相対的に高いとされる。また、上下水道の整備状況が不十分だった時代や地域では、飲料水から感染するケースも報告されている。

現代日本では衛生環境の改善により新規感染は減少しているが、全年齢層で一定の感染者が存在している。そのため、胃の不調が長期間続いている人や、家族に胃の病歴がある場合は、ピロリ菌検査を検討することがある。

ピロリ菌検査の種類と選び方

ピロリ菌の感染を確かめる方法はいくつかあり、症状や医師の判断によって適切な検査が選択される。

① 呼気(息)検査

検査薬を飲み、呼気に含まれる成分を分析する方法で、負担が少なく正確性が高いとされている。除菌後の判定にもよく用いられる。

② 血液検査

抗体の有無を調べる方法で、比較的簡便だが過去の感染も反映されるため、現在感染しているかの判断が難しい場合もある。

③ 便中抗原検査

便を採取して行う方法で、現在の感染状況を確認できる。

④ 胃カメラ検査(生検)

組織を採取して調べる方法で、視覚的に胃の状態を確認できる点が特徴である。胃炎や潰瘍の状況も同時に確認することが可能で、ピロリ菌感染の確定に使用される。

これらの検査は症状の種類や目的に応じて選ばれるため、医師と相談しながら選択するとよい。

ピロリ菌除菌治療の流れと薬の役割

ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療が行われることが多い。治療は抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を組み合わせて約1週間行われる。薬の作用により胃の中の酸が抑えられ、抗菌薬がピロリ菌に働きやすい環境が整う。治療期間中は薬の飲み忘れを避け、決められたスケジュールを守ることが大切である。

治療の成功率は薬の種類によって異なるが、除菌後に呼気検査を行い、確実にピロリ菌がいなくなったかを確認することが一般的である。薬によっては副作用として軽度の下痢や腹部不快感が出ることがあるが、多くの場合は一時的なもので、適切な対応により改善する。

ピロリ菌と胃がんリスクに関する考え方

ピロリ菌の存在が長期的な胃炎の進行と関連しているため、胃がんとの関係性が議論されている。特に慢性胃炎が長く続くと、胃の細胞が変化する可能性が高まり、リスクの上昇が示されている。無症状のまま長期に感染している人も多く、気づかないうちに胃の状態が変化しているケースもある。

ただし、ピロリ菌陽性であっても必ず胃がんを発症するわけではない。リスクを「ゼロにする」という考え方ではなく、「適切に把握して必要な対策を取る」という視点が重要である。定期的な胃カメラ検査を行うことで、粘膜の状態を確認し、異変があれば早めに対応することができる。

除菌後の経過観察と生活のポイント

除菌が成功した後でも胃粘膜の状態がすぐに改善するとは限らず、定期的なフォローアップが大切とされる。特に長期間炎症が続いていた場合は、胃カメラによる経過観察が役立つ。

生活習慣としては、以下の点が胃の健康維持に役立つとされる。

  • 刺激物を摂りすぎない
  • 過度な飲酒を控える
  • ストレス管理を行う
  • 食事を規則的にする
  • 睡眠を十分に確保する

こうした習慣は胃の負担を減らし、除菌後の回復をサポートする。

ピロリ菌が気になる人が受診する際のポイント

医療機関を受診する際は、症状の有無にかかわらず、過去の胃炎や胃潰瘍の診断歴、家族の病歴などを医師に伝えることが役立つ。また、検査費用は保険適用かどうかで変わることがあり、例えば呼気検査は約1,500〜3,000円、胃カメラは保険診療で約3,000〜6,000円が目安となる場合がある(医療機関や検査内容により異なる)。

まとめ

ピロリ菌は胃に影響を与える細菌であり、長期的な炎症が続くと胃粘膜の変化につながる可能性がある。検査方法や除菌治療の選択肢は複数あり、症状や状況に合わせて選ぶことが大切だ。無症状でも感染している場合もあるため、胃の不調が続く人や家族に胃の病歴がある人は、一度検査を検討するとよい。自身の身体の状態を理解し、適切な対応を取ることが胃の健康管理に役立ち、長期的な安心にもつながる。