ピロリ菌とは？｜胃の環境に適応する特殊な細菌

ピロリ菌は、胃酸の強い環境でも生き残れる性質を持っています。これはウレアーゼという酵素を使い、胃酸を中和して自身の生存環境をつくってしまうためです。

感染すると何が起こるのか

ピロリ菌が胃の粘膜に定着すると、以下のような変化が起こる場合があります。

• 慢性胃炎（慢性活動性胃炎）
• 萎縮性胃炎（胃粘膜が薄くなる状態）
• 腸上皮化生（胃粘膜が腸の細胞に近づく変化）
• 胃の防御機能が低下し、さまざまな刺激に弱くなる

これらの状態は、ピロリ菌 胃がん の発症過程と関連性があると考えられています。

ピロリ菌と胃がんの関連性｜研究でわかっていること

胃がん発症プロセスの流れ

多くの研究で、以下のような流れで胃がんにつながる可能性が示されます：

1. ピロリ菌感染
2. 慢性胃炎（長期的な炎症）
3. 萎縮性胃炎
4. 腸上皮化生（細胞の性質の変化）
5. 異形成
6. 胃がん

ただし、このすべての段階が必ず進行するわけではありません。 生活習慣、年齢、遺伝、食生活、既往症などさまざまな要因が影響します。

胃がん発症に影響するその他の要因

• 高塩分食の頻度 塩分は胃粘膜に負担をかけることがあり、ピロリ菌感染と合わせて炎症を加速すると考えられています。
• 喫煙 胃粘膜の血流を低下させる作用が指摘されています。
• 偏った食生活
• 遺伝的影響（家族歴） 家族に胃がんの既往がある場合は一度検査を検討する人もいます。

胃がんのリスク因子は複合的であるため、ピロリ菌感染が確認されたら、状況に応じて医師と相談しながら管理していくことが重要となります。

ピロリ菌の主な検査方法｜検査の特徴と選び方

ピロリ菌の検査には、非侵襲的な検査と内視鏡を用いる検査があります。

① 尿素呼気試験（UBT）

息を採取し、ウレアーゼの働きを利用して感染の有無を判断します。

• 身体への負担が少ない
• 精度が高い
• 多くの医療機関で導入されている

② 便中抗原検査

便を採取して抗原を確認します。

• 比較的精度が高い
• 子どもにも使用可能

③ 血液検査（抗体検査）

血液中の抗体を調べます。

• 過去の感染も含め確認できる
• 現在の感染の判定には追加検査が必要な場合がある

④ 内視鏡検査（生検）

胃の状態を直接観察できるため、他の病気の確認にもつながります。

• 慢性胃炎や萎縮の状態がわかる
• 同時に迅速ウレアーゼ試験を行う場合もある

それぞれ費用は保険適用の有無によって異なり、自己負担が変動します。

除菌治療の基本と注意点

除菌治療の流れ

一般的には、以下の薬剤を一定期間服用します：

• 抗生物質 2 種類
• 胃酸を抑える薬（PPI または P-CAB）

通常 1 週間前後の薬物療法が中心です。

除菌のメリット

• 胃炎の改善が期待できる
• ピロリ菌 胃がん の将来のリスク低減に関する研究報告がある
• 萎縮の進行を抑える可能性

除菌の注意点

• 除菌成功率には個人差がある
• 一時的に腹部症状が出る場合がある
• 除菌後もフォローアップが必要（胃の状態による）

除菌後の再検査

除菌後 1〜2 ヶ月以降に行うのが一般的。 尿素呼気試験や便中抗原検査で再確認します。

胃がんにつながる可能性のある症状

以下の症状が続く場合、ピロリ菌の感染の有無を含め、一度医療機関で相談すると参考になります。

• 胃痛・上腹部の不快感
• 胃もたれ
• 食欲低下
• 吐き気
• 体重が知らないうちに減る
• 黒色便（消化管出血の可能性）

これらの症状だけで胃がんと決まるわけではありませんが、ピロリ菌 胃がん の関係を踏まえ、継続する症状には適切な判断が必要です。

生活習慣の見直し｜胃を守るためにできること

① 食生活のポイント

胃を守り、炎症を緩和するために意識したいポイントとして：

• 塩分を控える
• アルコールは過剰摂取を避ける
• 刺激の強い食べ物を控える
• 野菜や果物を積極的に取り入れる
• 加工肉や焦げの強い料理は控える

② 禁煙を検討する理由

喫煙は胃粘膜の血流を低下させ、炎症の悪化を招く可能性があります。

③ ストレス管理

ストレスが強いと胃酸の分泌が増加することがあり、慢性的な胃の不調につながることがあります。

家族リスクと検査のタイミング

家族内感染の可能性

ピロリ菌は、主に幼少期の家族間接触で感染すると考えられています。 同居家族に感染経験がある場合、必要に応じて検査を検討する人が増えています。

検査を考えるタイミング

• 胃の不調が続く
• 家族に胃がん経験者がいる
• 健康診断で胃の異常を指摘された
• 一度も検査したことがない

相談できる医療機関の例

※ 良質な施設は多数あるため、以下はあくまで一例です

• ○○消化器内科クリニック
• 東京内視鏡センター
• △△胃腸内科診療所
• 大阪消化器専門クリニック
• 札幌胃腸診断センター

医療機関によって検査方法、費用、予約の流れが異なるため、事前に確認することが推奨されます。

フォローアップの重要性

除菌後の胃粘膜変化を把握する理由

除菌が成功しても、萎縮性胃炎や腸上皮化生が残っている場合、一定間隔で内視鏡検査が勧められることがあります。 状態に応じて検査の間隔が異なり、医師と相談しながら決めていく流れが一般的です。

胃の健康を保つための継続的な管理

• 食生活の改善
• 適度な運動
• 定期的な胃の検査
• アルコールや喫煙の見直し

まとめ

ピロリ菌と胃がんには関連性があると多くの研究で報告されており、早期の検査と適切な治療が胃の健康管理に役立つと考えられています。感染している場合でも、除菌治療や生活習慣の改善、定期的なフォローアップにより、胃の状態を長期的に見守ることが可能です。

胃の不調が続く、家族歴がある、健康診断で指摘されたといった場合には、一度ピロリ菌の検査を検討すると参考になります。将来の胃の健康を守るうえで、自分の状態を知ることが第一歩となります。