偏頭痛に悩む人へ|専門医が解説する原因と最新治療法
偏頭痛(へんずつう)は、日本人の約8〜10%が悩まされているといわれる慢性頭痛の一種です。ズキズキとした痛みが頭の片側または両側に起こり、光や音、匂いに敏感になるなどの症状を伴うこともあります。多くの人が「ただの頭痛」と考えて放置しがちですが、偏頭痛は脳や神経、血管の働きが関係するれっきとした神経疾患です。本記事では、偏頭痛の原因・症状・治療法から、専門医による診断・生活改善のポイントまで、詳しく解説します。
💡 偏頭痛とは何か
偏頭痛とは、脳の血管が拡張し、その周囲の神経が刺激されることで発生する「血管性頭痛」の一種です。 典型的には、頭の片側がズキズキと痛み、動くと悪化する特徴があります。発作は4〜72時間ほど続き、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
日本では、20〜40代の女性に多く見られ、ホルモン変動やストレスが主な誘因とされています。 男性より女性に多い理由は、エストロゲン(女性ホルモン)の変動が痛みを引き起こす一因となるためです。
🔍 偏頭痛の種類と特徴
偏頭痛には主に2種類あります。
● 前兆のある偏頭痛(クラシック型)
頭痛の前に「視覚異常」「感覚異常」などが現れるタイプです。 視界にギザギザした光(閃輝暗点)が見えたり、手足がしびれるといった症状が出ます。 これらは通常30分〜1時間ほどで消失し、その後に頭痛が始まります。
● 前兆のない偏頭痛(コモン型)
前兆がなく、突然頭の片側に強い痛みが起こるタイプです。 光・音・匂いに過敏になり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。 もっとも一般的で、全体の約7割を占めます。
⚙️ 偏頭痛の原因:なぜ起こるのか
偏頭痛の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が複合的に関与しています。
- 脳血管の急激な拡張 血管が拡張すると、周囲の三叉神経を刺激し痛み物質が放出されます。
- セロトニンの変動 神経伝達物質セロトニンが減少することで血管が拡張し、頭痛を誘発します。
- ホルモンバランスの変化 月経前後にエストロゲンが変動することで発作が起きやすくなります。
- 遺伝的要因 家族に偏頭痛持ちがいると発症しやすい傾向があります。
- 環境要因・ストレス・気圧変化 睡眠不足、強い光、騒音、気候変化なども引き金になります。
🧾 偏頭痛の主な症状
偏頭痛は個人差が大きいですが、代表的な症状は次の通りです。
- 頭の片側または両側のズキズキした痛み
- 光や音、匂いに対して過敏になる
- 吐き気・嘔吐
- 動くと痛みが悪化する
- 倦怠感・集中力の低下
発作前に「前兆」を感じる人では、視界がチカチカしたり、視野の一部が欠けるなどの視覚症状が現れることがあります。
🩺 偏頭痛の診断方法
偏頭痛の診断は、問診が中心です。医師は以下の点を確認します。
- 痛みの部位、頻度、持続時間
- 吐き気や前兆の有無
- 日常生活への影響
さらに、他の疾患を除外するために、頭部MRI・CT、血液検査などが行われる場合もあります。 診断基準は「国際頭痛分類(ICHD)」に基づき、一定の条件を満たすことで偏頭痛と診断されます。
💊 偏頭痛の治療法
偏頭痛の治療は、大きく分けて次の2種類です。
① 急性期治療
発作時に痛みを抑える治療です。 代表的な薬剤には以下のものがあります。
- トリプタン系薬(スマトリプタンなど):血管の拡張を抑え、発作を止める。
- NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェンなど):炎症を抑え、痛みを軽減。
- 制吐薬:吐き気を和らげる。
発作が始まってすぐ服用すると効果が高いとされています。
② 予防治療
発作が頻繁に起こる場合、医師の判断で予防的に薬を使用します。 代表的な薬は以下の通りです。
- β遮断薬(プロプラノロールなど)
- 抗てんかん薬(バルプロ酸など)
- Ca拮抗薬
- CGRP抗体製剤(新しい注射薬)
🧘♀️ 薬に頼らないセルフケアと生活習慣の見直し
偏頭痛を軽減するには、生活リズムを整えることが非常に重要です。
- 睡眠時間を一定に保つ
- 朝食を抜かず規則的な食事を心がける
- カフェインやアルコールの摂りすぎを控える
- ストレスを減らす工夫をする(深呼吸・ヨガ・ウォーキングなど)
- 強い光や音を避ける(サングラスや耳栓を活用)
また、**「頭痛日記」**をつけることで、自分のトリガー(発作を起こしやすい条件)を把握しやすくなります。
🧩 他の頭痛との違い
頭痛の種類を正しく見極めることが、適切な治療の第一歩です。
🏥 専門医に相談できる医療機関(例)
偏頭痛が頻繁に起こる、または市販薬で効果がない場合は、専門医の診察を受けましょう。 以下は日本で偏頭痛治療を行う代表的な医療機関です。
- 東京女子医科大学病院 頭痛外来(東京都新宿区)
- 聖路加国際病院 神経内科(東京都中央区)
- 日本頭痛学会 専門医検索システム
- 慶應義塾大学病院 神経内科(東京都新宿区)
- 北里大学病院 神経内科(神奈川県相模原市)
(※優れた医療機関は他にも多数あります)
💬 偏頭痛と上手に付き合うために
偏頭痛は完全に治すのが難しい場合もありますが、**「正しい知識」と「生活の工夫」**で発作の頻度を減らすことは可能です。 我慢せずに医師と相談し、自分に合った治療と生活習慣を継続することが大切です。
まとめ:偏頭痛は「我慢する病気」ではない
偏頭痛は放置すると、学業・仕事・日常生活に大きな支障を与えます。 しかし、原因を理解し、専門医とともに治療を行えば、痛みをコントロールしながら健康的な生活を送ることができます。 「頭痛くらい」と軽視せず、早期受診と継続的なケアを心がけましょう。