繰り返す偏頭痛を減らすには?薬に頼らないセルフケアと予防法
偏頭痛(へんずつう)は、脳の血管拡張や神経の過敏化によって起こる慢性的な頭痛で、日本人の約1割が悩まされています。本ページでは、偏頭痛の原因・症状・診断・治療法・セルフケア・予防までを専門医の知見に基づいて詳しく解説。薬物療法だけでなく、生活改善や最新の注射治療(CGRP抗体製剤)など、多角的な対策を紹介します。偏頭痛を「我慢する病気」にせず、発作をコントロールして快適な日常を取り戻すための実践ガイドです。
🧠 偏頭痛とは何か
偏頭痛(英語:Migraine)は、頭の片側または両側にズキズキとした拍動性の痛みが繰り返し起こる疾患で、数時間から長い場合は3日程度続くことがあります。発作時には、光・音・においに敏感になり、吐き気や倦怠感を伴うこともあります。
日本では人口の約8〜10%が偏頭痛を抱えており、特に20〜40代の女性に多く見られます。ホルモン変動やストレス、睡眠不足などが関与しており、単なる頭痛とは異なる「神経・血管性の疾患」です。
偏頭痛の種類と特徴
偏頭痛は大きく分けて2種類に分類されます。
● 前兆のある偏頭痛(クラシック型)
発作の前に「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる視覚異常や、手足のしびれ、言葉が出にくいといった神経症状が出現します。これらの前兆は30分〜1時間ほどで消失し、その後に強い頭痛が始まります。
● 前兆のない偏頭痛(コモン型)
最も多いタイプで、突然こめかみや目の奥に拍動性の痛みが起こります。光や音に敏感になり、吐き気・嘔吐を伴うこともあります。
偏頭痛の原因:なぜ起こるのか
偏頭痛の原因は完全には解明されていませんが、複数の要因が重なって発症します。
- 脳血管の拡張 発作時には脳の血管が急激に拡張し、周囲の神経を刺激することで痛みが発生します。
- セロトニンの変動 神経伝達物質「セロトニン」の急減少によって血管拡張が引き起こされ、痛みを誘発します。
- ホルモンバランスの変化 特に女性では月経周期や排卵期などのホルモン変動により偏頭痛が悪化する傾向があります。
- 遺伝的要因 家族に偏頭痛持ちがいる場合、発症リスクが高くなります。
- ストレス・睡眠不足・気圧変化 自律神経の乱れや天候の変化も発作を誘発する大きな原因です。
偏頭痛の症状
偏頭痛の症状は個人差がありますが、代表的な特徴は以下の通りです。
- 片側または両側のこめかみのズキズキする痛み
- 光・音・においに敏感になる
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 体を動かすと痛みが悪化する
- 集中力低下・倦怠感・眠気
前兆がある場合は、以下の症状が出ることもあります。
- 視界に光の点やギザギザが見える
- 手足のしびれや違和感
- 言葉が出にくい、発音が乱れる
偏頭痛の診断方法
偏頭痛の診断では、問診が最も重要です。 医師は痛みの頻度、部位、発作の持続時間、伴う症状(吐き気、前兆など)を詳しく確認します。
国際頭痛分類(ICHD-3)に基づき、他の疾患との鑑別も行われます。必要に応じて次の検査を行うこともあります。
- 頭部MRI・CT検査:脳腫瘍や出血などの除外
- 血液検査:ホルモンバランスや炎症反応の確認
- 神経学的検査:視覚・運動・感覚機能のチェック
偏頭痛の治療法
治療は「急性期治療」と「予防治療」の2本柱で行われます。
● 急性期治療(発作が起こったとき)
頭痛が始まった直後に服用することが効果的です。
- トリプタン系薬(スマトリプタンなど):血管拡張を抑制し発作を止める。
- NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェンなど):痛みと炎症を軽減。
- 制吐薬:吐き気が強い場合に併用。
早期服用がポイントで、発作の初期段階で対応することで痛みの軽減が期待できます。
● 予防治療(発作の頻度を減らす)
月に2回以上発作がある場合や、日常生活に影響が大きい場合に推奨されます。
代表的な薬剤:
- β遮断薬(プロプラノロールなど)
- 抗てんかん薬(バルプロ酸など)
- Ca拮抗薬
- 抗CGRP抗体製剤(新しい注射治療)
これらは医師の診断のもとで使用され、副作用のリスクを考慮しながら処方されます。
薬に頼らないセルフケアと生活習慣の見直し
偏頭痛対策では、薬だけでなく生活リズムの安定が重要です。
- 睡眠時間を一定に保つ(寝不足・寝すぎを避ける)
- 食事の間隔を空けすぎない
- カフェイン・アルコールを控える
- ストレスをためないよう、深呼吸・ストレッチ・瞑想を取り入れる
- 強い光や音の刺激を避ける(サングラスやイヤーマフを活用)
また、気圧や天候の変化に影響されやすいため、頭痛日記アプリを活用して発作のトリガーを記録するのも有効です。
偏頭痛と他の頭痛の違い
症状の性質を理解することで、より的確な治療が可能になります。
偏頭痛と日常生活:上手に付き合うために
偏頭痛は完治が難しいこともありますが、発作の頻度を減らし、生活の質(QOL)を高めることは可能です。
- 規則正しい生活を心がける
- 発作を我慢せず、早期に薬を使用
- 医師の指導を受け、治療を継続
- 周囲の理解を得て、ストレスを軽減
また、専門医による「片頭痛外来」の受診も推奨されます。
偏頭痛の治療が受けられる医療機関(例)
- 東京女子医科大学 頭痛外来(東京都新宿区) https://www.twmu.ac.jp/
- 日本頭痛学会(専門医検索可) https://www.jhsnet.org/
- 聖路加国際病院 神経内科(東京都中央区) https://hospital.luke.ac.jp/
(※優良な医療機関は他にも多数あります)
まとめ:偏頭痛は「我慢する病気」ではない
偏頭痛は放置すると慢性化し、仕事・学業・家庭生活にも影響を及ぼします。 しかし、原因を理解し、医師の指導のもとで治療・セルフケアを継続すれば、発作をコントロールすることが可能です。
「頭痛くらい」と我慢せず、専門医に相談し、生活リズムを整えることが快適な毎日への第一歩です。