偏頭痛が起こる仕組みと対処法|医師が教える予防のポイント

🕒 2025-11-07

偏頭痛(へんずつう)は、脳の血管拡張や神経の炎症、自律神経の乱れなどが原因で発作的に起こる頭痛です。本記事では、偏頭痛の原因、症状、治療法、そして日常生活での予防法について詳しく解説します。薬物療法や生活習慣の改善、ストレスケアなど、痛みと上手に付き合うための具体的な方法を紹介。さらに、偏頭痛専門の医療機関情報も掲載し、正しい知識をもって対策できるようサポートします。

はじめに:偏頭痛とは

偏頭痛(へんずつう)は、頭の片側または両側に強い痛みが発作的に起こる慢性的な頭痛の一種です。 日本では成人の約8〜10%が偏頭痛を経験しているといわれ、特に20〜40代の女性に多く見られます。

偏頭痛の特徴は「ズキズキとした拍動性の痛み」で、光や音、においなどの刺激に敏感になり、吐き気を伴うこともあります。 一度発作が起こると、数時間から数日続く場合もあり、日常生活に大きな支障を与える症状です。

本記事では、偏頭痛の原因・メカニズム・治療法、そして日常生活でできる予防策について詳しく解説します。

偏頭痛の主な原因

偏頭痛は単なる頭の痛みではなく、脳の血管や神経、ホルモンバランスなど、さまざまな要因が複雑に関係しています。

1. 血管の拡張と炎症

偏頭痛の発作は、脳の血管が一時的に拡張し、その周囲の神経が刺激されることで起こります。 血管拡張によって神経伝達物質が放出され、炎症反応が生じることで痛みが発生します。

2. ホルモンの変動

女性では月経周期に関連してエストロゲン(女性ホルモン)の変動が偏頭痛を誘発することがあります。 このため、月経前後に頭痛が悪化する「月経関連偏頭痛」が知られています。

3. 自律神経の乱れ

睡眠不足やストレス、気圧の変化などによって自律神経のバランスが崩れると、血流の調整がうまくいかず偏頭痛が起こることがあります。

4. 遺伝的要因

家族に偏頭痛持ちがいる場合、遺伝的に発症しやすい傾向があると報告されています。

偏頭痛の主な症状

偏頭痛の症状は人によって異なりますが、代表的な特徴は以下のとおりです。

  • ズキズキとした拍動性の痛み(片側または両側)
  • 吐き気・嘔吐を伴う
  • 光や音、においに敏感になる
  • 頭痛の前兆として「閃輝暗点(せんきあんてん)」が現れる
  • 動くと痛みが強くなる

偏頭痛の前兆として、視界がチカチカする、手足がしびれる、集中力が低下するなどの「オーラ症状」が見られることもあります。

偏頭痛と緊張型頭痛の違い

同じ頭痛でも、「緊張型頭痛」と「偏頭痛」では原因も対処法も異なります。

比較項目偏頭痛緊張型頭痛
痛みの特徴ズキズキと拍動性ギューッと締めつけるような痛み
部位片側または両側後頭部や首筋
原因血管の拡張・神経の炎症筋肉の緊張・ストレス
持続時間数時間〜3日程度数時間〜数日(慢性化しやすい)
対処法冷やす・薬を服用温める・リラックスする

偏頭痛は血管性、緊張型頭痛は筋肉性と覚えておくと、セルフケアの方向性を誤りません。

偏頭痛の治療法

偏頭痛の治療は、大きく分けて「発作時の治療」と「予防的治療」の2つです。

1. 発作時の治療

● トリプタン系薬

偏頭痛の発作時に使用される代表的な薬です。 血管の拡張を抑制し、炎症を鎮める効果があります。市販薬ではなく、医師の処方が必要です。

● NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

痛みが軽度の場合、ロキソニンやイブプロフェンなどの一般的な鎮痛薬が効果を示すことがあります。

● 吐き気止め薬

強い吐き気を伴う場合は、制吐薬を併用することで症状の軽減が可能です。

2. 予防的治療

発作が頻繁に起こる場合には、予防的な内服治療が検討されます。

  • β遮断薬:血管の過剰な拡張を抑える
  • 抗てんかん薬:神経の興奮を抑制する
  • 抗うつ薬:自律神経のバランスを整える

治療費は薬剤や通院頻度によって異なりますが、保険適用で1か月あたり約2,000〜4,000円程度が一般的です。

日常生活でできる偏頭痛予防法

偏頭痛を根本的に治すことは難しいですが、発作の頻度や強さを軽減することは可能です。

● 規則正しい生活リズム

睡眠不足や過度な寝過ぎは偏頭痛を誘発します。 毎日同じ時間に寝起きし、7時間前後の睡眠を確保しましょう。

● ストレスをためない

ストレスは自律神経を乱す大きな要因です。 軽い運動や深呼吸、趣味の時間を設けるなど、リラックスする習慣を持つことが大切です。

● 食生活の見直し

チョコレート、ワイン、チーズなど、血管拡張作用のある食品は偏頭痛を悪化させることがあります。 また、空腹も発作を招くため、適度な間食を取り入れましょう。

● 光や音の刺激を避ける

強い光や大音量は偏頭痛の引き金になるため、サングラスの着用や静かな環境を心がけます。

● 水分をこまめに取る

脱水も血管拡張を促す要因の一つ。1日1.5〜2Lの水分摂取を目安にしましょう。

医療機関での検査と診断

偏頭痛の診断は、問診・症状の経過・神経学的検査を中心に行われます。 必要に応じてMRIやCTで脳疾患の有無を確認します。

偏頭痛の専門的治療を受ける場合は、神経内科または頭痛外来の受診がおすすめです。

偏頭痛治療を行う主な医療機関(例)

以下は日本国内で偏頭痛治療に実績のある代表的な医療機関です(優良機関は他にも多数あります)。

  1. 東京女子医科大学病院 神経内科 https://www.twmu.ac.jp/univ/neurology/ → 頭痛・てんかん・脳血管障害などを専門的に扱う。
  2. 慶應義塾大学病院 神経内科 https://www.hosp.keio.ac.jp/ → 偏頭痛を含む慢性頭痛の診断・治療体制が整備されている。
  3. 日本頭痛学会認定 頭痛専門医検索サイト https://www.jhsnet.org/ → 専門医を地域別に検索可能。
  4. 脳神経外科クリニック(全国各地) → 偏頭痛以外の疾患との鑑別にも有効。

偏頭痛と上手に付き合うために

偏頭痛は完全に「治す」ことが難しい疾患ですが、 発作の頻度を減らし、痛みをコントロールすることは十分可能です。

ポイントは、自分の発作パターンを知ることです。 「どんな時に頭痛が起こるのか」「どの食事や環境が影響しているか」を記録しておくと、予防に役立ちます。

また、偏頭痛を周囲に理解してもらうことで、職場や家庭での負担軽減にもつながります。

まとめ:偏頭痛の正しい理解が改善の第一歩

偏頭痛は多くの人が抱える慢性疾患ですが、原因を理解し、生活を整えることで発作を抑えることができます。 発作が頻繁な場合は自己判断せず、医療機関で適切な治療を受けることが重要です。

「痛みを我慢する」のではなく、「コントロールして共に生きる」―― それが偏頭痛との上手な付き合い方といえるでしょう。