近年、日本では「小さな結婚」「少人数結婚式」というスタイルが急速に注目を集めている。従来、結婚式といえば100名以上のゲストを招待し、ホテルの大宴会場で豪華な披露宴を行うのが一般的だった。しかし、価値観やライフスタイルの多様化に伴い、「派手さよりも自分たちらしさを大切にしたい」というニーズが強まり、アットホームで温かみのある少人数結婚式に関心が高まっている。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により大人数の集まりが制限されたことを契機として、家族や親しい友人のみで行う小規模な結婚式が広がった。経済的な負担を抑えつつ、心から大切に思う人たちと過ごせることが人気の理由となっている。

少人数結婚式の定義と規模感

「少人数結婚式」とは明確な定義があるわけではないが、一般的には10名から30名程度のゲストを招いて行う式を指す。たとえば両家の両親と兄弟姉妹だけで行う「家族婚」は10名以下となり、親族と親しい友人を含めれば20〜30名ほどになる。会場の選択肢もホテルや専門式場に限らず、レストランや邸宅、ガーデンなど多様であり、大規模な披露宴に比べて「距離の近さ」「温かさ」「一体感」が重視されるのが特徴である。人数が少ないからこそ、一人ひとりに細やかな配慮が行き届きやすいという点も魅力の一つだ。

小さな結婚式の種類

少人数結婚式にはいくつかの代表的なスタイルが存在する。

• レストランウェディング：美味しい料理を中心にゲストをもてなすことができ、肩肘張らない雰囲気が魅力。料理にこだわりたいカップルや、美食家のゲストが多い場合に最適である。
• 邸宅ウェディング：一軒家やゲストハウスを貸し切るスタイルで、プライベート感やホームパーティーのような親密さを演出できる。装飾や進行も自由度が高い。
• 神社や寺院での和婚：伝統的な儀式を重視し、厳かな雰囲気で家族の絆を深められる。少人数であれば神前式の雰囲気も一層引き立つ。
• リゾート婚：沖縄や軽井沢、北海道など、自然豊かな場所で行う少人数の結婚式。旅行を兼ねることで、家族と過ごす思い出深い時間になる。

このように少人数結婚式はスタイルの自由度が高く、自分たちの価値観に合った選択肢を見つけやすい。

少人数結婚式のメリット

最も大きなメリットは費用の削減である。ゲスト数が少ない分、料理や引き出物、衣装、装花などの総費用を大幅に抑えられる。さらに準備の負担も軽減され、打ち合わせや進行の手間も減る。もう一つの魅力はゲストとの距離の近さだ。少人数であれば、一人ひとりとじっくり会話を楽しみ、感謝の気持ちを直接伝えることができる。形式にとらわれず、自然体で笑顔あふれる時間を過ごせるのも魅力である。また、短期間で挙式を実現しやすいため、妊娠や転勤などでスケジュールに制約がある場合にも適している。

少人数結婚式のデメリット

一方で、少人数ならではの課題も存在する。招待人数を制限するため、「本当は呼びたい友人や同僚を招けない」といった人間関係上の調整が必要になる。場合によっては「なぜ呼ばれなかったのか」と誤解を生むリスクもある。また、大人数の披露宴のような華やかさや余興が少なく、「結婚式らしさが足りない」と感じる人もいるだろう。加えて、人数が少ない分、1人当たりの料理や引き出物の質を高める傾向があり、結果的に費用が思ったよりも下がらないこともある。このようなデメリットを理解したうえで、自分たちが本当に望む結婚式の形を考えることが重要である。

準備の流れと注意点

少人数結婚式であっても準備には計画性が求められる。まずは会場選び。レストランや小規模会場は人気が高いため、早めの予約が必要だ。次に、料理や引き出物の検討を行う。少人数だからこそ、一人ひとりに合った心遣いを込められる。さらに、写真や映像の記録は必須である。小規模でもプロのカメラマンを依頼することで、一生の思い出をしっかりと残せる。進行においては、少人数ならではのアットホーム感を演出できるよう、歓談や写真撮影の時間を多めに取ると良い。また、祖父母や両親など年配のゲストに配慮した移動や座席配置も忘れてはならない。

費用の目安

少人数結婚式の費用は、30名規模で150万〜250万円程度が一般的である。大規模披露宴が平均350万〜400万円とされるのに比べると、半分以下に収まるケースが多い。家族婚（10名程度）であれば、50万〜100万円程度で実現可能な場合もある。ただし、料理の質や演出、写真・映像を充実させると、一人当たりの単価は大規模披露宴より高くなることもある。費用をどこに重点的にかけるかを明確にすることが、満足度の高い結婚式につながる。

季節ごとのおすすめスタイル

少人数結婚式は季節感を活かした演出がしやすい。春は桜や新緑を背景にしたガーデン挙式や神社婚、夏はリゾート地でのビーチウェディングや夕暮れのガーデンパーティー、秋は紅葉に囲まれた日本庭園での和婚、冬は暖炉のある邸宅やイルミネーションを取り入れた演出が人気だ。少人数だからこそ細部までこだわった演出が可能であり、ゲストにとっても忘れられない時間となる。

ゲストへの配慮とマナー

少人数結婚式ではゲスト一人ひとりの存在感が大きいため、細やかな気配りが求められる。特に料理の内容や座席の配置、写真撮影の機会などに工夫が必要だ。また、両親や祖父母など長輩には、丁寧な挨拶や感謝の言葉を直接伝えることで、式全体の雰囲気がより温かくなる。引き出物も数が少ない分、質の良いものやパーソナルなアイテムを選ぶと喜ばれる。

現代のトレンド：オンライン参加とサステナブル婚

近年では、遠方の親族や友人に向けてオンライン配信を取り入れるケースも増えている。会場に来られない人にも式の雰囲気を共有できるため、少人数でも「広がり」を感じられる。また、環境に配慮した装花やリユース可能なアイテム、ペーパーレス招待状を導入するサステナブル婚も注目されている。こうした工夫は、次世代への配慮としても評価される。

まとめ

「小さな結婚」「少人数結婚式」は、単に費用を抑えるための方法ではなく、大切な人との絆を深めるためのスタイルとして確立されつつある。形式的な華やかさよりも、温かさや一体感、そして自分たちらしい雰囲気を重視するカップルに最適である。会場選びからゲストへの配慮まで、少人数だからこそ可能な細やかな演出を工夫することで、一生忘れられない特別な一日を実現できるだろう。