GLP-1とは何か

GLP-1（グルカゴン様ペプチド-1）は腸から分泌されるホルモンで、血糖値をコントロールする働きがあります。食後にインスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑えることで血糖の上昇を抑制します。医療で使われるGLP-1受容体作動薬は、このホルモンの働きを人工的に再現する薬剤です。元々は糖尿病治療薬として開発されましたが、食欲抑制や体重減少の効果が注目され、肥満治療にも応用されるようになりました。GLP-1ダイエットとは、こうした薬剤を使った医療的減量法を指すことが多いです。

GLP-1の作用機序

食欲抑制

GLP-1受容体作動薬は脳の満腹中枢に作用し、食欲を自然に抑えます。これにより、食べ過ぎを防ぎ、摂取カロリーが減少します。

胃排出の遅延

胃から腸への食物の移動が遅くなり、長時間満腹感を得られます。これにより、間食や過食を防ぐことができます。

インスリンとグルカゴンの調節

GLP-1は血糖上昇時にインスリンを促進し、グルカゴン分泌を抑えることで血糖を安定させます。この作用により、血糖変動による過食のサイクルを改善できます。

代謝改善効果

GLP-1ダイエットは単に食欲を抑えるだけでなく、脂質代謝や肝臓の脂肪蓄積の改善にも影響することが臨床研究で示されています。これにより、体重減少だけでなく生活習慣病リスクの低下も期待できます。

臨床データと効果

代表的な試験結果

大規模臨床試験（STEP試験など）では、週1回投与のセマグルチド2.4mg使用者は68週で平均体重14〜15％減少という結果が報告されています。これは従来の生活改善のみの対照群に比べ、大幅な減量効果があることを示しています。

効果の個人差

GLP-1ダイエットの効果には個人差があります。体重減少が大きい人もいれば、軽度にとどまる人もいます。また、薬をやめると体重が戻るケースもあるため、生活習慣改善との併用が推奨されます。

使用対象者と禁忌

使用を検討できる人

• BMIが一定以上（肥満または肥満予備軍）の人
• 高血圧、脂質異常症、糖尿病予備群など体重関連の合併症を持つ人
• 生活習慣改善だけでは効果が得られなかった人

使用を避けるべき人

• 妊娠中・授乳中の女性
• 過去に急性膵炎を起こした人
• 消化器疾患や重篤な持病がある人
• 他の薬との相互作用が懸念される人

副作用と安全対策

消化器症状

最も多いのは吐き気、嘔吐、下痢、便秘です。通常は投与初期や増量時に発生し、時間とともに軽減します。

低血糖のリスク

GLP-1単独では低血糖は少ないですが、インスリンや他の糖尿病薬と併用する場合は注意が必要です。

稀だが重篤な症状

急性膵炎や胆石症の報告があります。長期影響として甲状腺腫瘍リスクが議論されています。定期的な医師フォローが重要です。

医療ダイエットと一般的ダイエットの違い

効果の違い

一般的な食事制限・運動は摂取カロリーと消費カロリーのバランスで減量を目指します。GLP-1ダイエットは薬で食欲や代謝に直接作用し、効率的に減量できます。

管理体制の違い

医療ダイエットは医師・看護師の管理下で行われます。副作用や体調変化を適切にフォローし、安全に減量が可能です。

継続性の違い

薬の使用中は効果が出やすいですが、停止後はリバウンドの可能性があります。生活習慣改善と組み合わせることが重要です。

受診前に知っておきたいこと

診察の流れ

1. 問診・既往歴確認
2. 血液検査、必要に応じ心電図など
3. 治療計画の説明（副作用、投与方法、費用）
4. 投薬開始と定期モニタリング

医師に確認すべきポイント

• 効果の目安
• 副作用の可能性
• 継続期間と生活習慣改善の組み合わせ
• 他薬との相互作用

専門相談の重要性

GLP-1ダイエットは医療行為であり、自己判断や非正規入手は危険です。医師の診断と定期検査・フォローが安全性と効果の最大化に不可欠です。

まとめ

GLP-1ダイエットは科学的根拠に基づいた医療的減量法です。安全に効果を得るためには、医師による診断・管理と生活習慣改善の併用が必要です。興味がある場合は、まず医療機関で相談しましょう。