子どものいびきは危険?小児睡眠時無呼吸症候群の基礎
子どもの寝顔を見ていると、いびきが聞こえることがあります。「大人でもいびきはあるし、子どもも同じでは?」と思う方も多いでしょう。ところが、小児期のいびきは必ずしも無害とは限りません。特に「小児睡眠時無呼吸症候群(小児OSA)」が隠れている場合、学習や発達に影響を与える可能性があります。本記事では、小児のいびきに潜むリスクと、家庭でできる観察・受診の目安をわかりやすく解説します。
子どものいびきはどれくらい一般的か
習慣的ないびきの頻度
学童期の子どものうち、数%から10%程度は「習慣的ないびき(週に3回以上)」があると報告されています。風邪や疲労による一時的ないびきは珍しくありませんが、毎晩のように続く場合は注意が必要です。
普通のいびきと病的ないびきの違い
普通のいびきは睡眠中に一時的に気道が狭くなるだけで、日中に症状を残さないことが多いです。 一方、小児OSAに関連するいびきは、呼吸が止まったり、睡眠の質が著しく低下したりするため、昼間の行動や発達に影響を及ぼします。
子どものいびきの主な原因
扁桃腺・アデノイドの肥大
最も多い原因が、扁桃腺やアデノイドの肥大です。これらが気道を物理的に塞ぐことで、いびきや無呼吸を引き起こします。
鼻づまりやアレルギー
慢性的な鼻閉やアレルギー性鼻炎も、口呼吸を誘発し、いびきの原因となります。花粉症やハウスダストの影響を受けやすい子どもは特に注意が必要です。
肥満
肥満によって首周囲に脂肪がつき、気道が狭くなることでいびきが強まることがあります。生活習慣や食習慣が影響します。
顎や顔面の骨格
下顎が小さい、顔の骨格が狭いなどの要因で、気道自体がもともと狭い子どももいます。
その他の要因
神経筋疾患、遺伝的要素、先天的な気道の異常なども原因として考えられます。
発育期におけるリスク
睡眠の質の低下
無呼吸や低呼吸により睡眠が分断されると、深い睡眠が確保できず、成長ホルモンの分泌が阻害される可能性があります。
学習や行動への影響
日中の眠気、集中力の低下、イライラや多動傾向が見られることがあります。これらはADHDと誤解されることもあるほどです。
身体的な成長への影響
成長障害や体重増加不良につながることがあります。
心血管系への影響
重度の無呼吸は酸素不足を招き、高血圧や心臓への負担のリスクを高めるとされています。
受診が必要なサイン
夜間のサイン
- 呼吸が止まる、あえぐ、息を詰めるような音
- 激しいいびきが連日続く
- 口を常に開けて寝ている
日中のサイン
- 学校での集中困難、落ち着きのなさ
- 強い眠気や居眠り
- 朝の頭痛や疲労感
成長に関するサイン
- 身長や体重の増加が停滞
- 栄養状態が悪化している
これらのサインが見られた場合、耳鼻咽喉科や小児科での受診を検討するべきです。
家庭でできる日常観察
観察チェックリスト
- いびきの頻度(週に何回)
- いびきの音量や途切れ方
- 呼吸停止の有無(何秒間止まったか)
- 睡眠中の姿勢(仰向けが多いか横向きか)
- 日中の行動(眠気・集中力・気分)
記録の工夫
スマートフォンで短い動画を撮影しておくと、診察時に医師に伝えやすくなります。
診断の流れ
問診と診察
まずは医師が症状の経過や既往歴を聞き、扁桃腺やアデノイドの状態を確認します。
ポリソムノグラフィー(PSG)
小児OSAの診断におけるゴールドスタンダードです。脳波、呼吸、酸素飽和度、心拍数などを一晩かけて測定します。
簡易検査
病院によっては自宅で行える簡易検査(酸素モニタリングなど)から始める場合もあります。
治療の選択肢
扁桃腺・アデノイド切除
最も一般的な治療法で、多くの子どもで有効です。術後は呼吸の改善と生活の質の向上が期待できます。
CPAP療法
手術が適応でない場合や、術後も無呼吸が残る場合に使用される方法です。夜間にマスクを装着して気道を広げます。
アレルギーの管理
アレルギー性鼻炎が原因の場合、抗アレルギー薬や環境整備が有効です。
生活習慣の改善
肥満が原因の場合、食事や運動習慣の改善が必要です。
家庭でできる対処法
睡眠衛生
- 就寝・起床時間を一定にする
- 寝室を静かで暗く保つ
- 就寝前のテレビやスマホを避ける
鼻の通りを良くする工夫
- 生理食塩水での鼻洗浄
- 加湿器の使用
- ダニやハウスダスト対策
受動喫煙の回避
家庭内での喫煙は、子どもの呼吸器系に大きな負担となります。
よくある質問
Q1:子どもがいびきをかくだけで病院に行くべき?
A:一時的で軽い場合は様子を見ることも可能ですが、習慣的に続く場合や呼吸停止が見られる場合は受診を勧めます。
Q2:手術を受ければ必ず治りますか?
A:扁桃腺やアデノイドが原因なら改善することが多いですが、肥満など他の要因があると症状が残ることもあります。
Q3:家庭での工夫だけで改善できますか?
A:軽症なら鼻づまり対策や生活習慣の改善で軽くなることもありますが、無呼吸が疑われる場合は医療機関での評価が必要です。
まとめ
子どものいびきは、時に「成長に関わる重要なサイン」となります。単なる音だと軽視せず、夜間の様子や日中の行動を観察して記録することが大切です。「呼吸停止の目撃」「習慣的ないびき」「日中の眠気や行動の変化」があれば、早めに小児科や耳鼻咽喉科を受診してください。診断や治療によって多くの子どもは改善が見込めます。保護者が気づき、行動に移すことが子どもの健やかな成長を守る第一歩となります。